■国産スギ特集
スギLVLで山を動かす、地域も動く
鳥取県・日南町で操業を開始した(株)オロチに、国産スギの未来を展望する
 約37万平方キロメートルといわれる日本の国土の内、約2,500万ヘクタール(25万平方メートル)を森林が占め 、それは国土面積の約7割にのぼる。その森林の内、約1,300万ヘクタールが天然林、約1,000万ヘクタールが人工 林、残りは竹林等である。
 昭和20年〜30年代、太平洋戦争により破壊された都市、経済、国民生活への復興需要により木材需要は急増し 、政府は「木材は今後も必要な資源で、日本の経済成長にも貢献する」との判断から、広葉樹からなる天然林の 伐採跡地や原野、或いは里山の雑木林地、奥山の天然林地を伐採して後、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ等 に代表される有用針葉樹の植林、所謂、拡大造林を大いに奨励し、その後の国内木造建築ブームにあやかって拡 大造林政策は更に進められ、様々な課題を抱えつつも漸く平成8年になって終わった。
 当面、拡大を続ける木材需要を賄う為、昭和39年に木材輸入の全面自由化が始まり、良質で国産材に比べ安価 な外材への需要が高まり、国産材は昭和55年をピークに価格が下落。それに伴い自給率9割以上を占めていた木材 も、ついには2割まで落ち込み、結果、拡大造林で植林した森林の間伐等の手入れが進まず、全国各地で森林の荒 廃が目立っているというのが現状である。
 言い換えれば、日本の森林資源は使われずに余っているという事態なのである。とは言え、資金不足から造林 した山の手入れがなされず、また時代の移り変わりから国民のライフスタイルも変わり、林業経営の立場から見 れば、まさにお手上げ状態であるのも事実だ。
 先人が一所懸命植林して成った人工林、なかでもスギ材をどう利用するのか、スギ材の付加価値を高め、森林 の荒廃をどう防いで行くのか、否、日本の林業経営、森林資源を如何に持続可能な事態へと導いて行けるのか…。
 こうした大きな課題へのチャレンジ事例の一つとして、本誌は今春鳥取県日野郡日南町・日野川の森林(もり) 木材団地内で操業を開始した「株式会社オロチ」を紹介しようと思う。
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 株式会社オロチ、なんとまあ「オそロチー」名であることか…。読者の想像された通り、日本神話に登場する ヤマタのオロチから拝借したようで、同社が作っている企業パンフレットには『オロチ』に准えて―と、こう解 説されていた。
 『八方を中国産地の山々に囲まれた森林のまち日南町。この地には、古くより神が潜むと云われています。頭 と尾を8つ持ち、背にはスギやヒノキを生やす龍神―八岐大蛇(ヤマタノオロチ)。オロチの棲む山々は豊かな恵 みと人の営みを支えていました』
 『そんな神話の眠るまちで、地域と共に再び山を動かしたい―。LVL製造を通じて、地域の先人が育てた木々を 生かし、また育んでいく。その循環により豊かな自然環境を次の世代へと結ぶ―。その思いから新たな息吹を吹 き込む企業として「オロチ」は動き始めました。』と。
 ちなみに同社のシンボルマークも図で紹介しよう。オロチが象る8の形を横に走る3本の線は解説にある通りだが 、LVL(単板積層材)をモチーフとして「人材」と「設備」と「森林資源」という三位一体を表しているようにも感 じられる…。
 さて、この株式会社オロチは平成18年1月に設立された。具体的に言えば、町の地域財産である「スギ」を使い 、住宅等の構造用管柱や梁桁、間柱の他下地材としてのLVL製品を最新鋭の技術で製造し、偏く販売して行こうと の目的で創業された。
 もとより森林業・木材加工業の振興、地域の活性化(雇用の創出)及び森林資源の有効活用を図る為であり、丸太 の100%活用に向けての木質バイオマス技術の研究開発についても、事業目的に挙げている。樹皮、単板屑などにつ いても無駄には出来ないと、事業概要からは木質企業の心意気が伝わって来るようだ。
 (株)オロチ社設立の背景としては、鳥取県日南町が平成17年7月に国から地域再生法に基づく「地域再生計画」 (名称=地球環境にやさしい森林林業の形成)の認定を受けたことに始まる。
 地域再生計画というのは、「地方公共団体が行う自主的かつ自立的な取組促進」並びに「地域経済の活性化や地 域における雇用機会の創造など、地域の活力の再生を総合的かつ効果的に推進」を目的に、それぞれの地域の産業 、技術、人材、観光資源、自然環境、文化、歴史などの有効活用へ向けて各種の支援措置が受けられるというもの で、日南町が主体となって策定した計画が国から認定されたことで、町内の森林所有者が中心となってスギ材の高 度加工施設として「株式会社オロチ」が設立された経緯であるようだ。
 ちなみに鳥取県日野郡日南町は人口5670人、鳥取県下最西端に位置し、総面積は340.87平方キロメートル。北は 日本海に面し、西は島根県・安来市、奥出雲町、南は岡山県・新見市と隣接。町内面積の内89%の約300平方キロメ ートルを林野が占め、文字通り森林資源は最大の町財産である。この森林資源を活用して町内活性化を図る大きな 手立てこそが(株)オロチの誕生である。
 そこで今回、同社代表取締役社長の森 英樹氏に、この度日南の森で静かに始まった国産材LVLプロジェクトにつ いて話を伺いながら、その内容について補足説明をして行きたいと思う。(詳細は本誌をご購読ください)

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