■本誌は提唱する
懲りもせず、再び「木造都市」を提唱するのは何故か

どこに建設したいのか
 本誌では、周辺に少しずつ関心の輪が広がりを見せつつある「“木造都市”提唱運動」――今はまだ促進運動 とまでは呼べる段階にないので――に真剣である。
 がしかし、日本の都市の中により沢山の木造建築物を建てよう、もっと増やしたい、と努力する一般的な木造 建築業界の願望とは、本稿でいう「木造都市」の在り方はいささか趣きを異にすることを初めに断っておきたい。

 昨年の本誌9月号にて『名古屋国際木工機械展に市民参加型併催事業が鋭意準備さる――そのテーマが「木造都 市の夜明け」なのは何故か』と題する拙文をお目にかけたが、これは引き続き11月号誌面でP17に亘り論陣を張っ てくれた我が盟友・船瀬俊介氏(環境問題評論家)の論文『「木造都市」の夜明けへ――「木造都市」「緑化都 市」が日本の未来と地球を救う』と軌を一にしていたのは勿論である。

 希望をいうならば、この「木造都市」実践の場所には「愛知万博=愛・地球博」の跡地こそが絶好だと考えて いる……それに隣接する豊田市は広域市町村合併によって、今や我が国でもトップクラスの森林保有圏者に浮上 したことがまずエポックに。また周知のように自動車業界で遂に世界一の座を占めた「トヨタ」のお膝元でもあ るからだ。

 公表された豊田市の行政区域は約9万2000ヘクタール(愛知県土の約18%)を占め、内包する森林面積は約6万 3000ヘクタール(市域の約69%)に達するほど極めて広大である。そしてスギ・ヒノキの人工林面積は約3万ヘク タール(森林全体の約48%)にも及びその3分の2が、林地内に日も射さず暗く手入の行き届かぬ過密人工林ゆえに 、地元では正規の対策が急務とされている。
 世界一に伸し上がった巨人トヨタにはまた、それに見合った大きな社会貢献の役割分担が新たに問われるわけ だから、まさに万博跡地に「木造都市」が展開されるには理想的な候補地となり得る……この「候補地」の意味 は、単なる場所の問題に留まらない……つまり国家百年の計に匹敵するような壮大な「実験的“特区”」でなけ ればならないからだ。


地震国日本は本気で考えてくれ!
 もう一つ、我々志を同じうする者が愛知県の内陸域に「特区」を設けてまで「木造都市」の実現を希求するの は、東京の担う首都機能の分散化への配慮でもある。
 2005年に新たに発見された関東地殻プレートによる「首都圏直下型地震」が起これば間違いなく首都機能は麻 痺するだろう……また古典的プレート型3大地震と恐れられる「1.東海地震」「2.東南海地震」「3.南海地震」が 次々に起こり、更にもし3つが連動誘発でもしたら日本という国の終末をも迎えかねない……これらはどれもマグ ニチュード7クラス(震度6強)もしくはマグニチュード8以上(震度7)と予測され、30年以内に起こる確率が皆 40%だの50%……場合によっては70%80%というから目が眩んでしまう。震度7とは気象庁の震度階(10階級=0〜1〜 2〜3〜4〜5弱〜5強〜6弱〜6強〜7)の最大震度を指す。まさにこの世のものとは思えぬ超巨大激烈震なのだ。中 で東海地震は静岡県の遠州灘に面した浜岡原発を直撃する筈だから、制御不能→暴走→爆発にでも至ればどうな ると思う?
 世界中を恐怖に陥れ全ヨーロッパに甚大な放射能被害を広げた、あのソ連時代チェルノブイリ原子力発電所4 号炉大爆発事故(1986年4月28日)は、当時いわれていた原子炉の構造欠陥や運転作業者の人為的ミスなどでは なく、何と「直前に発生した震度4程度の直下地震により、原子炉の緊急自動停止装置である制御棒の挿入機能 が働かず、臨界状態となって暴走し16秒後に大爆発」したとの恐るべき真実が、後々ロシアとウクライナ両国の 「科学アカデミー最終報告書」の形で公式発表され、やっと悪魔的封印が解かれた(前出の船瀬俊介著『巨大地 震が原発を襲う』2007年9月地湧社刊行)ことが明らかになっている今、どんなに関係行政が言い訳をし耳を封 じようとも地震国日本の、なかんずく東京が「世界で最も自然災害に脆い超過密都市」だということは覆い難い 周知の事実であり、とするならばそのための緊急対策を講じておくべきなのは当たり前である。
 この「木造都市」には、万が一に備えた首都機能の分散化に配慮した安全安心な行政的副都心の役割をも担っ て貰うことになる。ひところ騒がれた東京首都の移転問題の是非や、それに関してどの地が相応しいか……等の 「またぞろ誘致合戦」の前例とは、本稿でいう首都機能分散案を同列に扱わないで欲しいのである。


万博跡地なるがゆえの特有の難しさ
愛知万博の跡地はその気になればインフラ整備の条件は十分に整えられるし、国土地理的に見ても日本の中心に 位置している。この地に自然環境と共生するに相応しい「木造都市」をぜひ!
 更に二酸化炭素を吸収し樹体内に炭素を永続固定する森林の偉大な役割に鑑み、「都市の木造化」は第2の「 都市の森林化」でもある。ゆえに当初から科学的技術的な担保に援用された最も今日的で自然災害に強い「木造 都市」を建設することは、まさしく国家百年の計に値する大事といえよう。

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