■時の話題/特集-月刊ウッドミック300号発行に寄せて
「WOODMIC発刊300号に寄せて」 (財)日本住宅・木材技術センター客員教授 大熊 幹章
 本ウッドミック誌が、ここに記念すべき300号を発刊することを心からお祝い申し上げます。
 昭和58年5月に創刊された本誌は、いわば後発の新木材業界誌でありましたが、そのユニークで斬新な紙面は 我々読者に極めて新鮮に映りました。しかし、ウッドミック誌が歩んできたこの25年余の道は、バブル崩壊後 の木材工業界の歴史に連動して決して平坦なものではなく、「山越え谷越え」の苦難の連続であったことでし ょう。名古屋を中心とする木材工業界、特に機械工業界の厚い協力、そしていつまでもお若い寺沢眞先生の真 壁で熱い業界への思いがウッドミック誌の屋台骨を支えてきたものと思います。
 私が、今、思い出すのは、創刊から続いた巻頭言的な編集者の言葉、「散弾論法」の鋭い切り口、鋭い文章 です。世の中、おかしいこと、理解できないこと、気に入らないことに満ちあふれ、押し潰されそうな毎日で すが、当時それらの事象に対して辛口に批判し、適切に論評する文章を他に見ることは出来ませんでした。私 はこの論評の思考の起こし方、その文章の組み立て、書きっぷりに憧れるとともに、自分自身の文章、講演の 中でこの「散弾論法」式表現を取り込むことに努めました。現在この欄がなくなり残念な思いをしています。 編集後記にこの欄が移行しているのかもしれませんが、以前の「散弾論法」の鋭さが読みとれないようです。
 ついでですので貴誌について感じることを率直に書かせて頂きます。貴誌は歴史を重ねた立派な木材情報誌 です。しかし、取り扱う範囲が少し限定されているように思えます。分野的に木材加工・加工機械が中心とな ることは創設時からの流れで当然でしょうが、世の中は環境資材としての木材の評価と森林整備遂行のための 木材利用の推進、そして国産材時代の実現、に動いています。貴誌の内容が少しこの流れから距離をおいてい るように感じるのですが、如何でしょうか。
 「木材工業誌」のように研究者が素人的な編集をするのではなく、プロフェッショナルが編集することが本 誌の特徴であることは事実ですが、それだけでは地方の情報がどうしても後追いになってしまいます。地方編 集委員の役割を研究者に頼むことも必要かと思います。現状、東日本や九州からの情報がやや希薄ではないで しょうか。また情報が偏ってはいないでしょうか。
 今、思いつくものとして森林総研がこの2年間進めてきた「2050年の森林とそこに至るロードマップ」が完成 ・公表されましたが、林野行政等からも高い関心が持たれていること、東大の木造建築コース(社会人修士) が盛況で、これからの大学のあり方、役割の方向が開けつつあること、などを記事に取り上げて頂ければ幸い と思います。
 最後に私事で申し訳ありませんが、私は平成9年3月に東大を定年になり、その後九大、宮崎県の林務部と木 材利用技術センター、(財)住木センター試験研究所、さらに(独)森林総合研究所等に合計10年勤めさせて頂き ました。お陰様でこの10年間は私にとって厳しいが新鮮で充実した日々であったように思います。確かにこの 間、森林と木材について種々考える毎日であり、文章を書いたり、お話しをしたりする機会を何回か与えられ ました。それらの一部は(財)住木センターの機関誌「住宅と木材」誌の33巻に「2000年、気になる木遣いの道」 として1年間連載しましたし、また(社)全国林業改良普及協会の林業改良普及双書No.143の末尾に「気になる 木遣いアラカルト」としてまとめました。
 これらの文章の基礎が貴誌「散弾論法」にあったことは確かであり、改めて御礼申し上げる次第です。  率直に意見を申し上げましたが、独断と偏見、そして調査不足による意見かもしれません。貴誌の益々の発 展を祈念致します。

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