■時の話題/特集-月刊ウッドミック300号発行に寄せて
「月刊ウッドミック300号発刊に寄せて」 兼房(株)会長 渡邉 浩
 月刊ウッドミック発刊300号おめでとうございます。私どもの木材工業界におきまして、永年にわたり常にそ の時代時代に合った新しい有益な情報を発信し続け、今回の300号を迎えられましたことを、心よりお慶び申し 上げます。
 私は昭和33年に木工機械刃物工業界に入り、現在までずっとこの業界に身をおいておりますが、この間に私 が感じてきたこと、そして今感じていることを少し述べさせていただきます。
 私が入った頃は、日本経済が高度成長時代に入り、私どもが基盤とする住宅産業が人口の増加と相侯って経済 の牽引役となり、業界も日本経済とともに大きな成長を遂げました。しかし現在の日本経済では、住宅産業は一 巡し、少子高齢化社会の到来により成熟産業となり、変わってIT産業などが台頭し、業界の伸びも鈍ってきてお ります。そしていまや、日本経済はボーダレスのグローバル競争が加速度的に進行しており、欧米などかねてか らの先進国のみならず、中国、インド、ロシアなどの新興経済国がグローバル経済に積極的に参入し、力強い成 長を遂げております。このような中で、業界も世界を視野に入れたグローバル競争に変わってきました。世界全 体から見れば、木材工業界における需要は大きく、競争力のある物をつくれば、まだまだ成長することが可能です。
 私が最初にドイツのハノーバー木工機械展に見学に行ったのは昭和35年頃であり、当時のヨーロッパは木工機 械および刃物はもちろん、社会全体が日本に比べ文明的であり、目を見張るものがあった記憶があります。それ からたびたびドイツを訪れ、ヨーロッパの技術を勉強し、新しい機械設備を導入したりしました。
 もともとヨーロッパの木材加工は、日本の木材加工が柱や建具などの直線および平削加工に対し、窓枠、ドア、 家具などのカッタ、ルータ加工が中心でありました。従いまして、日本は刃物づくりの基礎的な技術水準では決 して劣ってはいなく、かんな刃、超仕上かんな刃あるいはベニヤナイフ、スライサーナイフなど平刃は当時から 日本の方が優れていたかもしれません。
 私は潜在的に日本人のものづくりについては世界一の力を持っていると思っております。商売のかけひきは下 手でありますが、良いものをつくろうというこだわりを持っております。そういう意味で刃物づくりは日本人に 向いた仕事であるように思えます。刃物は資本があれば、あるいは製造設備をそろえたらすぐできるものではあ りません。技術と経験とこだわりがないと良い刃物はできなく、さらにユーザーの要望に応えて新しい刃物の改 良、開発が必要です。刃物づくりは目に見えない刃先で仕事をするものであり、被削材、刃物の角度、剛性、振 動、磨耗などにより大きく影響されます。また、刃物の焼入れ、鋸の腰入れの技術あるいは刃物独特の再研磨サ ービスなどは容易に機械に置き換えることのできない技術です。私ども業界においては、このような日本独特の 技術、技能を永年の間に蓄積してきました。
 現在のグローバル競争の中で打ち勝っていくためには、このような日本人の技術、技能の優位性を活かした付 加価値の高い製品をつくっていくことだと考えます。そのためには独創的な基礎技術の研究と独自性の高い新製 品を市場に供給していかなければなりません。あわせて、日本は世界一高物価社会になっており、日本の賃金は 世界一高いと言われていますので、グローバルな立地での生産などの最適化を推し進めることと、日本での生産 の効率化、合理化を徹底して進め、製品のコストダウンを図って価格競争力を高めていくことも必須のことであ ると思います。
 変化の早いたいへん厳しい時代になりましたが、引続き木材工業界の皆さんとより協調を深め、業界の共存と 発展に少しでも寄与できたらと願っております。

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