■ 「木造都市」の夜明けへ―
  「木造都市」「緑化都市」が日本の未来と地球を救う
船瀬 俊介(地球環境問題評論家)
保育園も木造OKで建築ラッシュへ
 最近、木造建築の見直しが進んでいる。福田新総理ですら木造200年住宅を提唱しているほど。 時代は大きく変わろうとしている。  小中学校の校舎も木造化が急速に進んでいる。保育園舎も木造化にスタートが切られた。  2004年3月29日、文科省は幼稚園の木造化推進を決定している。  これまで幼稚園設置基準では、火災などを想定し「保育室の場所は1階を原則とし、2階 に置くばあいは、園舎を耐火建築にしなければならない」という規則があった。  つまり、2階建園舎は実質的に“木造禁止”だったのだ。このような規定は小中学校設置 基準にはない。最近は、小中学校や幼稚園の校舎・園舎でシックスクール症候群が社会問 題化している。保護者からも「化学物質を減らし、新築・改築時には木造にして欲しい」 という要望が強まっている。このため小中学校の新築では、木造校舎がかつてないほど急 激に増え始めた。  これは、本当に好ましい動きだ。これらのトレンドに呼応して、文科省も、それまで幼 稚園舎の木造化のブレーキとなっていた2階保育室“禁止令”を緩和。建築基準法が求め る耐火基準に合致さえすれば、木造OKとなった。  この実質的な幼稚園、保育園の木造許可を受けて完成したのが、本誌既報(2007年6月号 および8月号)で紹介した三重県の『おおとり保育園』である。木造校舎の建築ラッシュに つづき、これら幼稚園などの木造ラッシュもまた大いに加速することは、まちがいない。
“世界の安藤”コンクリート保育園にノー!
 この保育園の木造化の動きと対照的な“事件”がマスコミを賑わした。コンクリート打ち っ放し保育園に保護者が反旗をひるがえしたのだ。ついに戦後最凶の“暴力建築”コンクリ ート打ちっ放しに鉄鎚が降り下ろされた。  「“世界の安藤”に親『だめ出し』――設計の保育園改修」(『中日新聞』2007年9月11日) (図1)。 安藤忠雄氏はコンクリート打ちっ放しという無機的建築で世界的に有名だ。安藤 氏の建築哲学は「夢想」「暴力」「狂気」……といったもの。彼の持論は「快適な住宅は、 もっともアカン」。つまり建築は「暴力と狂気と夢想に満たされていなければならない」と いう。まさに凶悪な建築思想である。だから、彼の出世作で日本建築学会賞を得た『住吉の 長屋』はコンクリート打ちっ放し。「『快適』はアカン」のだからトイレは、わざわざ戸外 に作った。「甘えるな!」というわけだ。彼の建築思想は「住むことは格闘や」。ほんらい 建築や住宅というものは人や家族の安全と快適を守るべきものだ。  ところが、この狂気の建築家は「安全はアカン」「快適はアカン」という。彼は「家と格 闘せえ」と住民を叱咤する。「建築と格闘することでヒトはさらに強くなれる」というのが 持論なのだ。元プロボクサーらしい発想だ。  
「夢想」「暴力」「狂気」……の恐怖
 彼の頭には乳幼児や子ども、病人、老人など弱者への配慮など爪のさきもない。彼は心の 底で「弱いものは生きている資格はない」と思っているのではないか。さもなければ「住む ことは格闘や!」などといった暴言は吐けるわけがない。  「夢想」「暴力」「狂気」で設計された建築は、まさに「暴力」「狂気」等で住む人を圧 殺する。  この安藤氏設計の保育園改修事件で、ついに一般市民が彼の“狂気”にノーを突き付けた。 その意味で近代建築史におけるエポックメーキングな事件といえる。  事件は東京都調布市の市立仙川保育園(園児約100人)で起こった。一帯は安藤氏による街 づくり設計で「安藤ストリート」と名付けられている。ここに保育園や音楽ホールが併設さ れている。外観写真を見てすぐに連想したのが刑務所の塀である。それほど非人間的な外観だ。 まさに安藤氏の「暴力」哲学が反映されたデザインだ。
「デザインより安全を!」で大改修
 その非人間性は、保育園設計で頂点にたっした。3月に完成した園舎は鉄筋コンクリート3 階建て。内も外も壁も柱も安藤氏お得意のコンクリート打ちっ放し。柱は直角がむき出し。 開園直前の内覧会で父兄たちは衝撃を受けた。角のある柱。打ちっ放しコンクリ壁。「これで は子どもが怪我をする!」。保護者たちから不安の声が上がったのも当然だ。「まだ工事中か と思ったら完成していると聞いてビックリ」と孫を通わせる60代の女性。「デザインより安全 を!」と抗議と不安の殺到に市は急きょ、角のある柱の周囲に気泡入り緩衝材を巻きつけ、 吹き抜けには落下防止ネットを張るなど応急措置を施し5月にオープンさせた。9月からは廊下 の柱をゴムカバーで覆ったり、柱の角にクッション材を付け補修し、さらに約750万円もかけて 本格的な改修工事を行う。しかし、こんな危険な園舎建築を設計段階でチェックできなかった 市側の責任も重大だ。職員からは「『世界のアンドウ』に口を挟むのは気が引けた」という声も。 安藤忠雄建築研究所(大阪市)は「安全を確保したつもり。改修は本意ではないが、保護者の 不安を解消したいという市の判断に従った」とコメント。コンクリート剥きだしの柱、壁で 「安全を確保した」とは驚きの発想だ。
 (続き詳報は本誌 通巻296 2007年 11月号をご購読下さい)

(編集部)

前のページへ戻る