イタリア・ミラノ国際木工機械展/家具工業資材展2006視察
―本誌特派員報告
「第20回XYLEXPO/SASMIL2006」から
 今回からイタリア・ミラノのロウ・フィエラ(RHO Fiera)に 新設された会場で、「第20回ミラノ国際木工機械展(キシレキスポ)/ 家具工業資材展(サスミル)2006」が、5月16日(火)〜20日(土)の5 日間にわたって開催された。
 この新しいミラノ見本市会場は地下鉄のRHO Fiera駅の出口が 会場の正面となるように配慮されていて大変アクセスが良い。
 ミラノ展主催者の発表によれば、今年のキシレキスポ/サスミルは20 回目を迎え、総入場者数が9万3266人で、その内51.5%にあたる 4万8008人が113ヵ国よりの海外ビジターであり、主催国のイタリ アからは4万5258人が入場し、これは前回の2004年開催時より4.6 %増加している。また、出展企業807社のうち海外からの出展は256社であった。 
 開催日初日に僅か15分程度ではあるが、多忙なイタリア木工機械刃物 工業会のドクター、パオロ・ザニボン(DR. Paolo Zanibon)専務理事が 特別に時間を割いて下さり、直接、ミラノ展の状況をお伺いする機会を得 たので、先ず、木工を取り巻く環境として、世界的に不足している木材に ついて訊いてみた。
 ザニボン専務理事の話に寄れば、イタリアへの木材供給は植林による針 葉樹の松等をはじめとして、フィンランド、ノルウエー、オーストリア、 スイス等の中欧、北欧の国々で生産される木材が丁度良い伐採期を迎えた おり、入荷量も年々増加し、潤沢に賄われていると云う。そして、イタリ アは自国の植林木材需給率が約20%で、残りの80を輸入していると云う。
 確かに、近年ムクの木材の加工品に比べて、所謂MDF等のボードを素 材とした加工品が盛んになっているが、「超」が付く程の急成長で世界中 から形振り構わず原木を買い漁りまくっている中国によって、全ての材料 が高騰し、世界随所で材料が大幅に不足していると思うのであるが、イタ リアでは木材資源の需要供給が安定している様子であった。

 当面、イタリアが力を入れて行く市場はスペイン

 マーケティイングの分野の話では、今、イタリアが一番重要視している は市場は、民族、地理、言語、ものの考え方等がとても似通っているスペ インであるそうだ。
 かつて、ヨーロッパでイタリアは比較的労働賃金が安くコストパフォー マンスに優れた国であったが、EUになってからはコストの高い国の一つ に数えられるようになってしまった。その結果、フランスやドイツ同様に 多くの失業者を生んだばかりか、自国よりコストの安い国に仕事が流れて 行った。その行き先が隣国スペインなのである。 
 過去2年間を振り返ってみれば、スペインは機械輸出先として急速に伸 びている。スペインは木工産業のベースがありながら、現地木工機械製造 メーカーが少ないことも、イタリア製の木工機械の売り上げに功をなして いる理由の一つだとも云われている。
 続いて輸出先順位を挙げるとアメリカ、フランス、旧東欧圏、ロシアと なるそう。 
 一部の企業を除いて、アジアに参入して来ないのは何故か、との質問に 対しては、台湾に強豪が多数存在する。少数ではあるが、国際競争力を求 めて中国に渡った日本の企業とも競争し、後発ではあるが、低価格で迫っ てくる中国を相手にしても多くのメリットがないばかりか地理的に遠く、 参入するタイミングも良くなかった、ザニボン専務理事は云うのである。  中国河岸沿いの都市、韓国、台湾、日本は彼等からすると「極東」であ り、その言葉は地の果てを意味するのであるから、氏の言うことも一利あ る。
 一方、ドイツ勢のホマッグ・グループやヴァイニッヒ・グループのよう にアグレッシブに中国に製造工場をプランはイタリアの企業に無いのか、 と問うと、一部の企業は既に製造しているが、イタリアとドイツでは市場 に対するアプローチの方法が異なり、資本力の差も大きく、言葉の障壁も あるので余り聞かれないと云う。言葉についてはドイツとて同じ条件では あると思うのだが…。
 本筋から外れるが、欧米人が中国語をある程度まで理解するのには約22 00時間が必要であるが、日本人、韓国人が学ぶ場合は600時間のプ ログラムで生活に必要な話ができるそうだ。豪州市場は地理的に距離はあ るがイタリア移民も多く、イタリア製機械の贔屓が多い。しかし、人口が 少ないこともあって大きなマーケットではないそうだ。一方、ニュージー ランドも豪州同様である。両国共に、人口比率から見れば他の国の木工機 械を抜いてイタリア製のシェアがトップである。 

 抬頭する中国、日本は年々少なくなる

 日本からキシレクスポに単独出展者している企業は機械刃物の兼房(株)一 社に、名古屋国際木工機械展のみであった。一方、日本に法人を持つ外資 系企業からは、ミカエル・ヴァイニッヒ・グループ、ホマッグ・グループ、 ロイコ・ハベラ、ライツ等が出展していた。また、サスミルには家具の引 手、蝶板等の金物類でおなじみのスガツネ工業(株)を見かけた。 
 中国からは20社も出展していたが、昨年のリグナ・ハノーバーでも見 かけた企業がそのうち約三分の一以上を占めていた。彼等の出品機械を見 ると、後発組ながら機械の品質や性能向上は著しく、台湾を席捲する勢い だと感じた。恐らく今年六月下旬に開催予定の「ウッドマック・上海」 (6月27日〜30日)でもその実力を見せつけるに違いない。 
 既に、昨年リグナ・ハノーバーで名刺を交換し、更に同年のウッドマッ ク上海で会っている中国の企業の方と、かなり打解けた話が出来たので彼 等のマーケッティングや企業の方針について、日本や欧米諸国との戦略の 違いを紙面に述べさせて頂くと…
 ・ 基本的に製造者はディーラーであり、代理店であり、小売でもある。 特に、製造者が直接ユーザーに接して販売することは、市場動向、ユーザー の声がモニターされ、より良い製品の開発に繋がる。商売は本来単純なも ので、そう云った意味で、中国は初期段階の資本主義だと中国の出展氏は 言う。
 ・ 同じ中国内でも、各企業により価格の算定基準が違うので全く一様で は無いが、販売価格の設定は買手が幾らの設定なら購入意欲が湧くか…で 決める。
 ・ 資本関係のないディーラーの存在は、言語、地域等、製造者側の営業 力が及ばない場合に利用される。中国は、国を挙げて輸出による外貨獲得 を推奨していて、ビザを取り難い国であっても、その国に中国大使館があ れば、イミグレーションに掛け合ってビザを取得しやすいように外務省が 協力すると云う。
 この様な話を聞くと、中国政府が如何に国益たるものを重要視している か良く解かる。何処かの国の様に、本来有るべき事を怠ったサロン組織と は訳が違う様だ。
 日本、イタリア、ドイツ等を始めとして、多くの先発組の業界人に比べ て中国からの出品者に若い世代が活躍しているのが目立つ。しかし、彼等 の本音は、経営者を含めてこの業界の未来を疑問視していて、未来は技術 転用による業種転換や企業売却を考えている、と本音をが聞こえてきた。  言い換えれば、いくら植林が進み、バイオ・テクノロジーで早生樹が誕 生しても、消費スピードの方が勝っていて…、現在はまだ業界が成長して いるとはいえ、地球の未来は決して明るいものではないことを物語ってい るの様だ。

 無垢材加工用機械は益々減少

 ミラノ展に出品された機械開発の面では、イタリア、ドイツ共に早くか ら無垢ではない材料による加工技術、商品開発に着手していてソフトウェ アに一日の長がある。
 例えば、エッジ・バンダー等は、その一例に過ぎない。日本が対抗でき る技術はフラッシュ製品生産技術くらいであろう。現地の出展者にインビュー してみて解かったことは、文化的背景、マーケッティング、素材の入手経 路に至るまで、我々日本とはかなり異なる経緯があるのを強く感じた。
 今回のミラノ展示会では製材、乾燥機、集塵設備などの出展は極めて少 なく、無垢材の加工機械が以前よりも減少していた。その反面LVL、MDF、 OSB、パーチクルボード加工機の増加が著しい。それだけ、有用 樹種原木の不足から、生産性、歩留率が高いボード製造に木材工業界が重 心を移動していることが解かる。木端、樹皮、オガ粉、廃材等を有効な資 源として活用するチッパー、ペレタイザー、ブリケットマシーンも多数出 展されていた。 大きな国際展では業界未来の姿が見えるものである。  キシレクスポ/サスミルではそれを強く感じた。

(本誌特派員=寺崎友康)

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