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新春放談
TPP交渉は日本にとって最大のチャンスである
語る人――日新興産(株)代表取締役社長 原口博光氏

 はじめに
 日本は現在、木材の炭素固定機能を活かして地球温暖化を防止する観点から、国として木材利用に積極的に取り組まないといけない時代を迎えている。治水上でも山の国土保全機能を生かすため、間伐を行なって健全な山を取り戻し、日本の木を使っていかなければいけない。国産材シェアを現在の28%から50%へ伸ばそうとするならば、地域にこだわらず、国全体で国産国消というスタンスで産業振興に向かっていくべきだ。
 政府主導で住宅、農業、漁業、更にエネルギー問題に対して、しっかり産業政策として取り組んでいかないと、大きな課題を今後更に抱えることになる。だが、これらの課題は全てチャンスでもある。
 つまり現在、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉が進められているが、このTPPを契機として、日本の産業を新しい視点で見直すことができる。

 多国間交渉である点がチャンスに!
 TPPは良くアメリカ主導だと言われるが、実は日本―アメリカ間にはFTA(自由貿易協定)締結に向けての動きがある。TPP自体は多国間交渉。元々はシンガポールやブルネイなど東南アジア諸国が主体となって2006年に始まった。東南アジアの基準は日本より非常に低いもので、故に、交渉する過程において、日本は寧ろTPPによって東南アジアに進出しやすくなる。
これは農業も同じだ。日本の農業従事者が3%で、その大半が65歳以上。35歳以下の労働者はほんの僅かでその内5%しかいない。3%の農業人口を増やしていくには、抜本的な構造変革が必要になるのだ。
 日本の農業は現在、政策が無きに等しい状態だ。戸別所得補償などでは全く改善されない。国として農業を強くするために、別の政策・方法を考えなければいけない。日本のコメの関税は、現在778%と世界でも異常な高さで設定されているが、コメの保護の仕方、農林漁業を守る方法がTPPに参加することで、変化するきっかけ、チャンスとなる。国として弱い部分をいかに強くしていくか、それが国の政策であるべきなのだ。
 TPPでは、自国の文化を交渉の中で主張することで、日本の独自性を盛り込んでいくことができる。「食の安全が守れなくなる」とも言われるが、WTO(世界貿易機関)の協定には、食の安全に関してSPS協定(衛生食物検疫措置の適用に関する協定)に基づいて交渉を行なうよう明示されている。だから、日本の農産品重要5項目〔コメ、麦、砂糖、牛・豚肉、乳製品〕に関しては、日本を守る意味で交渉をしっかりすべきだし、それとは別の次元で捉えれば、日本の美味しいコメや、ADI(一日摂取許容量)基準で守られた日本の安全な食品をどんどん輸出することも可能になる。
 例えばコメに関しても、アメリカと日本ではコメの消費量が全く異なり、消費量で比較してみれば、単純にアメリカ米がどうこうとは言えない。遺伝子組み換え食品表示にしても、日本では必要なもの。オーストラリアやニュージーランドが賛同したことで、アメリカも表示する方向に態度を軟化させている。
 こうした、日本―アメリカ間では力の関係でできないことが、多国間との交渉では一国対多国となり、アメリカが条件を飲まざるを得ない状況がこれからどんどん出てくるだろう。
TPPは、早く交渉のテーブルに付くことによって自国に有利に展開させることができる。保険の問題も良く取り上げられるが、保険制度は日本の文化であり、滅びることはない。日本がTPPに対して感じている恐れは、どちらかと言うと感情的なものではないか。プラスにするためにどうすべきかを粘り強く交渉することによって、日本の築いてきた文化は残すことができる。文化は関税とは関係ないものだからだ。TPPを一つのチャンスと捉え、今後の大きな戦略を考えれば良い。

対アジア戦略としてのTPP
 TPPとは中国対策でもある。中国はアジアの中で各国と個別にFTA協定を結ぶことによってどんどん攻めてきた。TPPは多国間交渉になるため、現在、中国は様子見を決め込んでいるわけだ。
 日本の経済人が一番心しないといけないことは、相手が共産主義国である、という点だ。巨大な市場・中国は、政経分離の下に成り立っていたため市場としては有効だった。向こうも日本にもどんどん進出してきた。
 ところが、領土・領空という主権問題に係わってくると、共産主義の一党独裁のため、経済的に圧力を掛けてくる。
 つい先日も中国から10名の経済人トップが訪日して経団連を訪れ、経済交流の活発化を目指そうと意志を確認し合った。訪問返しで日本の経団連は、倍の20名で訪中した。日本からすると、中国の申し出に対する誠意の表れだろう。しかし、この誠意は民主国家にしか通用しない。中国側は「日本は中国を必要としている」と、逆に利用し始める。日本人が重んじる誠意、互いの安定・繁栄のために健全に成り立とうという思想は、良い時にはうまく回るが、一度悪くなると逆手に取られるのだ。
 中国がGDPで世界2位になる前、現在のように何かと主張していたかどうか。人口約5000万人、GDP世界15位の韓国も同じで、韓国の場合はFTAによって輸出戦略が成功し、成長してきた。
だがその背景には、良質な部品を日本から仕入れて組み立て、資本財を日本から輸入して消費財を輸出する、という図式がある。
 韓国は日本と一緒に成長してきた。それが今頃になって終戦後の協定で既に決着がついている問題を持ち出してくる。朴槿惠(パク・クネ)大統領が就任してからは、時代が親日から反日へと逆行して、更にエスカレートしていることは嘆かわしい。
 以前、中国の大連を訪れた時、大連の工業団地の60%は日本企業の進出によるものだと聞いた。つまり、日本人が現地の雇用を支えて生産して輸出に貢献している。あらゆる面で、日本企業の進出によって中国は大きく成長することができた。中国人はそのことを知っているはずだ。だが、進出が急激で大きければ大きい程、その反動は大きい。急激に経済力をつけたことで、尖閣諸島や防空識別圏の問題を始め、何かと一方的に主張するようになってきた。
今や中国は軍事力でもって日本だけでなく周辺諸国に対して勝手な振る舞いを続けている。その軍事力の源は経済だ。つまり、国の経済力が増せば増すほど軍事力を増していく。中国に対しては、これからは生産力や巨大な市場としてだけではなく、治世学的にも経済活動を考えていかないといけない。
 日本の経済人は中国に対する考え方を改め、国家にとって我々経済人の役割は何であるのか、見つめ直す必要があるだろう。中国は、発展途上時(GDP世界第2位以前)は政経分離政策であったが、経済力が付いた後、政経不可分政策に変わってしまった。共産主義を自由主義と同様に捉えることは非常に危険なことだ。
その意味でも、TPPは良いチャンスになる。中国は今、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどにどんどん進出しているが、日本も、生産拠点を中国から東南アジアの国々へ徐々にではなく、早急にシフトしていくべきであろう。
 だからこそ、TPPの交渉テーブルで、日本の文化、安全性を主張することでTPPのあり方を問えば良い。アメリカからの要求が不利だと思ったら、他の参加国に持ち掛けて主張し、判ってもらえば良い。
 その席には中国も韓国もいない。欧州勢もいない。日本にとっては色んな面で自由主義として戦える場なのだ。この先、中国や韓国がTPPに参加したとしても、その時には既に交渉は成立し、彼らの発言の場はなくなっているだろう。

TPPは歴史の必然が生んだチャンス
 実は、2012年の衆議院議員選挙で政界引退された武部 勤氏はその後、「一般財団法人 東亜総研」というシンクタンクを設立されている。武部氏は議員在職中からベトナム友好議連を始め、東南アジアの国々の議連会長を多く勤められた。東亜総研を設立後、現在、日―越(ベトナム)の協力でベトナムに日越大学を造ろうと働きかけている。
 中国や韓国の反日教育は今でも行なわれているが、将来に亘って世界のグローバルスタンダードを生きていく中で、このような教育は、経済ばかりか人の交流を妨げるものとなってしまう。一歩間違えれば、将来の戦争の火種を育てることにもなろう。
 武部氏がベトナムに大学を造る、という話を聞いた時に、正直、「これは中国や韓国に対する人材教育的包囲網になる」と感じた。日本が東南アジアで長く築いてきた経済交流に、中国や韓国はどんどん進出しつつある。日越大学を造ることによって、ベトナムの人達に本当の日本の歴史や文化を知ってもらうことができる。歴史的に日本が何をした、中国が何をした等ではなく、本当の意味での将来を背負う人材の教育ができる。
 東亜総研の設立趣意書の冒頭で、武部氏は、
大きく変動しながら急速に一体化が進む世界にあって、私達は今、歴史的な転換期を迎えている。その最も顕著な地域である東アジアは、世界の成長センクーとして目覚しい経済発展を遂げる一方で、格差や貧困、疾病、自然災害、環境問題など、直ちに解決することや避けることが困難な諸課題に直面している。同時に、それらに起因する社会不安や過度のナショナリズムの高まりが、地域の安定と平和を脅かすとの懸念もある
 と、東アジアに眠る大きな可能性と弊害について示唆している。だからこそ、
世界の平和と東アジアの安定を図り、東アジアの成長を日本の成長とするためにも、日本の持てる力を発揮すべきだ
 と、設立への協力を強く呼び掛けている。その目的とする役割は3つ。
@東アジア並びに関連する諸国や地域に対し、対話を促進するための信頼関係を構築すること。
A対話の中から政治・経済・外交・安全保障など各般に亘り、今必要なこと、末来にとって必要なことを探り出し、価値観とビジョンの共有を求めつつ、調査研究・情報収集・分析評価を行なうこと。
B必要なものを具体化するためにコンサルティングを行ない、人材の育成・交流、投資や技術の紹介・斡旋などの事業を推進すること。
こうして相互理解を促進し、協和の精神を高め、東アジアの民生向上と経済発展に寄与し、国と国との友好関孫を強化する。ひいては世界の平和と繁栄に貢献できるという、何とも壮大なスケールだ。
 武部氏は、議員の席を辞して自由に動き回れるようになり、この事業に日本を代表して取り組まれている。
 TPPも環太平洋多国間交渉であり、このような時期に日越大学の話が持ち上がるとは、正に、歴史は偶然が重なり、必然になると実感する。

 TPPとは、歴史の必然である。TPP交渉というグローバリゼーションの中に入っていったことを機に、国を強くするための色んな制度改革を行なえる。
日本という国は、多くの面でまだまだ公平感が少なすぎる。所得格差や業界格差をなくしていかなければならない。事業比率99.7%・従業員比率70%の中小企業で働く人々で日本経済の基盤が構成されている。その社会に対応した政策の改革を望むものである。


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