■シリーズ日本の林業はいま(その4)
  三重県の雄、速水林業を訪ねその経営基盤や経営方針を聞く……
  さすが220年続いた尾鷲林業の名門だけに奥深い歴史の推移が心打った(前編)
      語る人 速水林業9代目当主 (社)日本林業経営者協会会長 速水 亨 氏

 人の健康や自然環境を絶対に損わない材料と木構造技術を駆使し「本物の住宅」を実現させ世に広めようと、 全国網で強力な同志的結合を固めている運動体グループ非営利中間法人天然住宅(事務局=東京都目黒区中根1-1 0-18、(株)アンビエックス内、相根昭典会長=(株)アンビエックス社長、TEL03-5731-3624)は、自らの掲げた目的 に沿って事業活動の普及に日夜邁進している……そして1月5日(月)・6日(火)の両日、三重県尾鷲市で臨時研修会 を開いたが、目的の第1部は同会同志のアイ・ケイ・ケイ(株)(東京都板橋区坂下2-27-3、伊藤好則社長、TEL03- 3967-4551)が開発した杉板の一日乾燥装置「愛工房」の納入先・畦地製材所(三重県尾鷲市南浦小原野1675番地、 畦地秀行社長、TEL0597-22-0212)にて、愛工房最新炉の予想を超えた稼動の成果や乾燥データに実際に触れなが ら、グループ他社の乾燥木材供給態勢の整備拡充を図る会員全体協議のため。更にまた第2部として翌日朝一番か ら地元の雄たる速水林業(三重県北牟婁郡紀北町海山区引本浦345、速水 亨社長TEL0597-32-0001)を訪問し同社の 視察研修を重ねた……その折の速水林業の経営方針や同基盤の細部など要旨を、今号と次号の2回連載で紹介させ ていただくことにする。  (文責=本誌編集部)


尾鷲林業の位置づけとその成り立ち
 ここから北へ行った標高240mほどの荷坂峠は伊勢へと流れる宮川の上流で広範なスギ地帯。南下した矢の川峠 の南側も同じくスギ地帯。裏は有名な吉野だが、吉野と宮川に繋がる辺りも全部スギ地帯だ。そういうスギに囲 まれた我々の「尾鷲林業」は約3万haの民有林中心の小さな林産地で、地形的気候的な問題等々で尾鷲林業はどち らかといえばヒノキ主流の林業地帯として存在している。
 何故ヒノキなのかを歴史的に俯瞰すればそもそもはスギが植わっていたのだが、他の地域に比べてその成長が 非常に悪い……我々には何玉(1玉は3m長)採れるかが収入面で大事だが普通の所より2玉ほど樹高も低い……故に 次第にヒノキへと転換してきた。
 もう一つの理由は尾鷲という地形のせいで、市街地が次々に拡大するに従って元々スギが植わっていた場所は 宅地や農地に転換され、次第に山の中腹部に追いやられた結果スギの姿は数を減らした。


 尾鷲林業地帯の成長の悪さ(樹高・肥大・総量も含めて)はスギだけでなく主体のヒノキも然りで、全国のヒノ キ産地11カ所で比較すると尾鷲は9〜10位と末端に近い……結果的にその成長の悪さを補うため密植方式で自然落 枝させ、上下径差が緩慢な木を育ててきた。
 周知のように電気動力で製材するのは大正時代〜昭和初期からだが、その前の明治中期〜後期は蒸気動力で、 そのまた前の江戸時代〜明治初期は手作業で製材した……低能率な手作業では柱も板も無駄な耳の出ない、或い は加工度合が少ない玉材が望ましいわけで、それを当地では上下径差の少ない「本末同材」と呼んでいる……本 (元)と末が殆ど同じ太さだと、木挽き鋸、手斧(ちょうな)程度の素朴な道具でも比較的容易に柱が採れるから都 合が宜しい。すなわち尾鷲林業の成長の悪さが逆に「本末同材」を得るのに適していたのである。
 皆さんはスギに関心が強い方々のようだから話すが、ヒノキの中で育った当地のスギは非常に品質が良いけれ ど残念ながら量が纏まらない……で一部の製材業者が小規模にマーケットを維持するのみで、「尾鷲スギ」とい う名前も持てず「熊野スギ」のように知名度も上げられなかった。


 木の品質管理は育林の段階から行なわれねばならないにも拘わらず、昨今、間伐の必要性が叫ばれる割には品 質管理という話が殆ど聞かれないのは何故だろう。
 植栽から伐採までのあらゆる段階全てが、最終商品に対する品質管理でなければならないと私は考えている。 特に年輪のバラツキや節の有る無しに関して人々は「高価な木」を造るためと解釈しているが、実際はそうじゃ なく如何に「品質の安定した木」を得るか、のためにこそ枝打ちし適切な間伐に励むのである。
 これは持論だが「森林地帯」と「林業地帯」とは概念が違う……戦後、木材の最終商品に関して余り知識のな いままに唯単に資源としての木を植えてきたのが「森林地帯」だ。極端にいえば素晴らしい森林地帯も沢山ある わけで、この森林地帯が今ちょうど木材生産という形で「林業地帯」に替わろうとしている……だからこそ様々 な問題が起きているわけだが。
 一方「林業地帯」は多くの市場に対して木材生産技術や流通方式を備えてはいたが、長い歴史に甘え、旧態依 然の業界構造の歪みが払拭できない……背後の吉野林業もそう、我々の尾鷲林業もそう、故に製材工場が大きく なり得ない……実態が家内工業だからコストダウンも上手く図れない。
(詳細は本誌をご購読ください)

戻る